関門海峡の海難事故について

護衛艦”くらま”と韓国のコンテナ船衝突事故について。
死者が出なかったことは不幸中の幸いであったが。


まず最初に、北沢防衛相が原因を特定できない時期なのに陳謝した
(報道によれば、だが)のかが理解出来ない。

取るべき行動としては情報収集と平行して、
 1.人的被害を抑える指示を出すこと
 2.物理的被害を抑えること
 3.原因の究明
を順位立てて行うのが最優先であって、全容が把握できない前に
マスゴミ”の前で陳謝する意味が判らん。
政治家の発言とは思えない迂闊さであり、政治家としてアマチュア以下と
言わざるを得ない。


海保の情報提供についてもマズい内容がかなり多いとはいえ、結果的に
事故となったのは韓国船の船長の操船判断ミス。
船足が速く、速度を落とすのは困難な状況だったと想定するが、
交通量の多い海峡で速度を出しているのがそもそもの問題ではないかと。
(そんなに急いだところで、絶対的な速度が遅い船では関門海峡前後で
速度を落としたところで到着時刻の遅れはたかが知れている)
決定的に、韓国船に非があるのは狭い海峡で速度を出していたことと
海上衝突予防法に沿った行動を行っていなかったことだろう。
(相手の船を右舷側に見ている側の船に回避義務があるが、韓国船の
右舷側に衝突の痕が残っている)


”元”船乗り(大型船舶航海士)で、関門海峡を何度も通過したことの
ある父曰く、関門海峡はそれほど難所という程の海峡ではない
(父に言わせれば来島海峡が日本で一番難所とのこと)けれども、
交通量が多いことと、潮の流れ次第で操船は難しくなる可能性が無いとは
言い切れないが、あの事故はそもそも速度を出し過ぎていたことに原因が
あったのではないかと。


それから、”くらま”で気になったことが1点。
船首部の事故でなかなか鎮火しなかったのは有事の際のダメージコントロール
問題は無いのかと。
(※管大臣が同乗した閲覧式の為の塗粧にもちいたペンキに、損傷した電線
からのスパークにより引火した疑いが強いとのこと。)

”くらま”が建造された時期は、兵装/レーダー含む船体上部構造物の重量が
肥大化する傾向にあり、荒天時の復元力低下を懸念して軽量化のために
アルミ合金を用いて建造していた。
このアルミ合金だが、高温に晒されると強度が急激に低下するという特性がある。
フォークランド紛争HMSシェフィールドがエグゾセ対艦ミサイルの直撃を受けた後、
ミサイルの残燃料による延焼で沈没したという戦訓から、海自は”くらま”と同系艦
以降建造された護衛艦の上部構造物には鋼鉄を主に用いられることになったと聞く。


今回の事件では”くらま”に悪条件が重なり過ぎて火災の鎮火に時間を要したが、
これが有事だったら、万が一の火災にこんなに長時間を費やして鎮火活動している
場合かと、ちょっぴり懸念を抱かざるを得ない。


”くらま”も回避行動すればという意見もチラホラあったが、韓国船が転舵して
コースが”くらま”の進路に被さってきた状況で”くらま”側は逆進する以外に
衝突を避ける最善の策は無かったのではないかと。


あの損傷では船首部の修理が長期間になりそうだが、キールにまで損傷が及んで
いたら1981年就役の船だから修理せずに退役になるかな・・・?
そうなると、ヘリを同時に2機搭載できる護衛艦の運用計画に大きな穴が開いて
しまう問題が出てくるな。